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「一軒の店が街を変える」って?

「一軒の店が街を変える」って?

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『一軒の店が街を変える』このフレーズはかなりの頻度で目にするのではないだろうか? そして何となく、あるスローなエリアに店がポツンとオープンしそれが人気が出て、 やがて他にも店が出来始め、静かな街が賑やかになったりするってことだろうなっていう風に何となく思っているんじゃないだろうか。 けれどバルニバービが考えていることは、もうすこし深い思いがある。 例えば我々が店を出す。「素敵な店?」「美味しい店?」「近所にこんな店欲しかった!」歓迎の思い、これは有難い。 けれど、その逆も当然ある。「うるさい!」「臭いが!」「閑静な街なのに」…嫌悪の意識。 勿論、以前からお住いの方からそいう反応が出ることは予想される。 つまり、変わることを歓迎される方々と反発される方々。 『街を変える』ってことにはその相反する思いをどこで折り合わせるのか、ということだよね。 変えたい人と変えたく無い人、この落としどころと空気を読み違えると痛い目に遭う。 我々の「街が明るくなっていいでしょ」や、「みんなにとって良いでしょ」という思いは、 一歩間違えば思い上がりとなり、逆の考えの方々の「街が騒がしくなった」という反応を受けることにもなる。 我々が小石川の青いナポリの前の道(名前すら無い一方通行の狭い道)を小石川オリーブ通りと名付けたことを知っているだろうか? 道を自分たちの前部分以外も掃除し、オリーブの木を町内に配り、プレートを掲げ街のイベントに参加し、寄付を行い、そうしていつしか街の住人として少しずつ受け入れられ、仲間と認識していただき… ここにいたり、初めて「街が変わる」と呼べるのでは無いかと僕は思ってる。 店ができたり、通行者の数が増えたりということではなく、他所からの者がその街に何らかの思いでやって来て、 その街とコミュニケーションを始める。 当初はよそ者扱い。それが、いつしか馴染み、とけ込んでいく。 けれどそれは全てが旧来の形に融合されるのではなく、よそ者の持ち込む何がしかのモノを付加し融合する。 そうそれこそが、文化の融合である。 『我々の一軒の店が街を変える』ということは、そういう融合変化を意味するのである。 6月にオープンした、虎ノ門グッドモーニングカフェ&グリルのテラスに佇み、3年前まではそのカケラの微塵も目にすることの無かった新虎通りを眺めながら、街が変わるぞ…我々が店がそしてスタッフがこの街にどう融合して行くのか楽しみである。

WRITER 佐藤 裕久

京都市上京区生まれ。神戸市外国語大学英米語学科中退、1991年 バルニバービ設立、代表取締役に就任。現在、東京・大阪をはじめ全国に90店舗(2021年1月末時点)のレストラン・カフェやスイーツショップを展開。著書に『一杯のカフェの力を信じますか?』(河出書房新社)『日本一カフェで街を変える男』(グラフ社)がある。