前編では関東ルーキーズの5人にこれまでにした失敗を話してもらった。 失敗から一つひとつ前へと進んでいく彼らだが、安藤は「本当にそれは失敗なのか?」と問う。 安藤が語る失敗の定義とは?
「俺は人生で失敗したことない」
通常であれば、誰しもが失敗を経験しそして失敗から学び成長していく。安藤は「これまでの人生で失敗したことがない」と話す。
安藤は25歳で起業している。22歳の頃からそう決めていた。大学卒業後、営業力を伸ばそうとまず入社したのはリフォームの会社だ。成績を伸ばし続ける安藤にとある商社から声がかかったのは入社から1年後。安藤は百貨店業界に進出したいという当時の常務にヘッドハンティングされたのだ。営業力を買われてのことだった。
商社に入社後、商品開発の末生み出した商品は店の広さ5坪ながら出店から1年で予想以上の利益を上げた。他の百貨店からも出店オファーが来るようになり、飛ぶ鳥を落とすいきおいで成長していく。自信をつけた安藤は、当初の予定通り25歳で起業する。繋がりがある菓子業界での起業だった。そして自身の会社の商品も爆発的に売れていく。
安藤27、28歳は調子に乗ってたよね。お金だけ渡して店を社員やアルバイトに任せっきりにしてた。店は増えても人がついてこない状況。そんな天狗の鼻はさ、へし折られるんだよ。
株式会社バルニバービ 常務取締役COO 安藤 文豪(あんどう ふみひで)29歳頃くらいから店の赤字が続いていく。できるという過信が安藤を追い詰めていった。ついに工場の生クリームも買えなくなった。店を解体しなければいけないが解体業者に依頼するお金もない。安藤は自ら台車に冷蔵庫を乗せて運び出したり、壁紙を剥がしていった。飲食はもうやめようと思った。
安藤どうせやめるなら食に関わる人たちに会いに行こうってふと思った。お菓子製造工場の工場長だったり、給食センターの所長だったり…いろんな人のつてで紹介してもらってね。その中にたまたまバルニバービの佐藤社長がいた。社長も一度会社を手放していて重なる部分があり「安藤くんもう一回食の世界、一緒にやらないか」って声をかけてもらった。それで俺は今ここにいる。
安藤は現在常務取締役として経営はもちろんM&Aに挑戦するなどバルニバービの発展を支えている。
世の中に失敗なんか一つもない
安藤店がつぶれていってどん底を見た。でも、そのどん底期間は失敗か? 失敗にするのか失敗ではなくするのかは、その時の自分が決めることじゃない。未来が決めるんだ。
未来の自分が成功を掴んでいれば、過去が持つ意味は変わる。 もし、安藤が「起業なんかしなければよかった」「儲かっていた時でやめておけばよかった」そう思っているなら起業したことは失敗だったのだろう。安藤が「起業してよかった」「あの頃があってよかった」そう思っているのなら、すべては失敗ではなく成功までの過程の一つになる。
安藤過去はどんどん変わっていく。過去があるから未来があるっていう話じゃないんだよ。今の俺が、未来の俺が過去を変えるの。当然、新しいことをすればミスはあるよ。俺も一緒。だけどそれは絶対失敗じゃない。成功なんだって思って欲しい。
安藤は「賢者は未来を見て、凡人は今を悩み、愚者は過去を悔やむ(著者:不明)」という言葉が好きなのだという。自分はこの先も死ぬまで過去は悔やみたくないと話す。
安藤凡人だから、今を悩んだりすることはある。でも、俺は未来を見ていたい。今日失敗談を話してくれたけど、実はそれが成功だよって伝えたい。明日以降の未来の自分が「あれは成功でした」って言ってくれると俺は嬉しい。
失敗は誰が決めるのか。それは、1秒後の自分であり遠い未来の自分であるのだ。 今すぐ「成功」だと思うのは難しいかもしれない。落ち込むこともあるかもしれない。そんな時は「過去は変わるものだ」とそう思うことから始めよう。変えられない、そう思うよりもずっと前向きな気持ちになるはずだ。