辞めたいと思ったときの藤波社長の采配
夘月さんが所属するBCOは藤波幸生社長が代表取締役を務めるバルニバービグループ会社の一つです。藤波社長はスタッフ一人ひとりの資質を見極めるプロ。何がしたいのか何が向いているのかを見極め、適材適所へ送り出します。藤波さんは「向いてないことをさせること程、罪なことはない」と話し、時には「その人がやりたいことでも資質がないと思えば、諭して別な道に導いてあげること」もあるそう(藤波社長取材記事より)。
夘月: GARB TokyoではWeddingだけでなく丸の内仲通りに出したキッチンカーも担当しました。その後、GOOD MORNING CAFE 品川シーズンテラスでバレンタインなどの企画ものの立案、隣にRUN CUBEがあったので、こちらでは受付、月額料金の請求など細かい事務も行いました。特に貴重な体験だったのは「旅するマーケット」の「旅するスタンド※」です。旅するスタンドでは様々なお店を出していました。一番最初私ラーメン出してたんですよ!麺を茹でたり、背脂を3時間煮込んだり。さすがにびっくりしました(笑)
夘月さんは2回ほど「辞めたい」と思い藤波社長に話したことがあるそう。その度に「まだやれることあるでしょ」と言われ、「これやってみない?」と新しい場所へ送り出される。夘月さんがデザインの仕事をし出したのも藤波社長の「やって欲しい仕事がある」という一言でした。デザインソフトを使用したこともない全くの未経験だった夘月さん。デザイン部にきてから約3ヶ月研修期間を設け、アシスタントとしてソフトの使い方から覚えていきました。
夘月: 現在はBCOの店舗を担当させてもらっています。もちろん、まだまだ相談してアドバイスをいただいています。引き止められずに辞めていたらどうなっていたかわからないけど、今やらせてもらっていることは転職したら絶対にやらせてもらえないこと。だから、辞めないで、この環境にいれて良かったなって感じています。
※旅するスタンド...日本各地の市町村と協力して魅力を発信する「旅するマーケット」の企画運営にバルニバービが参画。地域の食材を活かしたメニューを考案し提供している。
服飾から飲食の道へ。好きに挑戦してみること
夘月さんが飲食の道へ進みたいと思ったのは大学4年生、進路を考え出した頃でした。大学は服飾系、なぜ飲食を考え出したのでしょうか? まずは大学進学について話を聞きました。
夘月: きっかけは忘れちゃったんですけど、高校3年生の頃にアート系、デザイン、芸術系が好きなんだなぁってわかり出したんですよね。それで服も好きだったので服飾関係の大学を選びました。大学は楽しかったです。西洋服飾史など服飾を通して芸術的なことを学べました。そして卒業近くなって友人と展示会をしたんです。お客様に軽くお茶を出したりして...楽しいな、こういうの好きだなと感じました。その時にカフェもいいなと思ったんです。
大学自体は楽しかったもののアパレル関係の就職に関しては悩んでいた夘月さん。
夘月: 一旦好きなことをしてみてから将来のことを考えようと思いました。
そこから1年間、夘月さんはアルバイトをしてカフェの専門学校に行くお金をためました。専門学校に行ってからは実践的なラテアートなどの技術だけではなく、店舗経営、店舗デザイン、インテリアなど幅広く学んだそう。
夘月: 学んだ知識は今でも活きています。PL(損益計算書)など店舗経営に関する数字の見方を理解していたことは自分にとって大きかった。私の夢は、いつになるかわかりませんが自分のお店を持つことなんです。だから、色々な経験ができてすごく勉強になっています。
特に「旅するスタンド」での経験もとても勉強になったと話します。
夘月: 数字のこともそうですけど、自分で料理をして自分でお客様に出して、シェフに「こういうメニューが出したい」という提案もすることができました。旅するカフェは一番私の夢に近い形態だったんです。
一歩一歩夢へ近くために
「いつか自分のお店を持ちたい」
夘月さんの夢は藤波社長も知っています。だからこそ「将来お店やりたいんでしょう? だったらあそこに行って、あれを経験してきて」と夘月さんに様々な経験をさせてくれるのだそう。
夘月: ここまで色々やらせてもらっている人はいないんじゃないかなと思います。いつか一人で全部できるための経験を積ませてくれている。だからまず言われたら「やってみよう」って思います。辞めたいときもまずやってみてからにしようって。
今行っているデザイン業務も店舗運営には欠かせない力です。特にバルニバービは建築、インテリア、お皿、スタッフの制服、ロゴ一つとってもしっかりと「デザイン」されています。
夘月: 3ヶ月の研修期間、BCOの店舗ではなく蔵前のCielo y Rioなど他グループ会社店舗のメニューをつくらせてもらったんですけど、それはすごく勉強になりました。他店舗のメニューとかじっくり見ることもないので、こういう風にやってるんだなぁって。
自分がデザインした制作物が店舗に出ることについてはどのように感じたのでしょうか。
夘月: 最初はめちゃめちゃ怖かったですけどね(笑)でも、私は現場側の気持ちもデザイン側の気持ちもわかる。だから、私にしかできないこともあるんじゃないかなって思うんですよね。もっと現場に踏み込んだデザイン、それこそ直接売り上げにつながるようなとか、オペレーションがもっとうまくいくような、とか、そういうデザインをしなければいけないんだろうなとか考えてやっています。
最後にいつもの質問「なりたい自分」について話を聞きました。
夘月: 今は、もっとBCOの店舗をよくしていくためにはどうしたらいいかっていうところで私にできる事はなんなのか探している感じです。好きなというか、得意であろうことをやらせてもらっているし、楽しいです。でも夢から逆算したらここがゴールではない。だからもっと成長したいですね。デザインの技術力とか、みなさんのように早いスピードで返していけたらいいな。私の唯一の取り柄が、根気強さだと思うので、効率も悪いんですけど、自分になりに納得がいくまでしっかり取り組みたいと思います。