STORY
“ポートランド バイブレーション”
眠りに着く前に…
「全米で住みたい都市No.1ポートランドを訪ねて」であるアメリカオレゴン州ポートランド訪問は我々の今まで進んで来た道、そしてこれから 我々の向かう先への僕のイメージをバイブレートさせた。
『サスティナブル~“持続可能”』と『ウィアード~“風変わり”』
この二つがこの街のキーワード。
住みやすさや治安の良さも話題となるが実際には犯罪発生率で殺人を除く全カテゴリーで全米平均を上回っていることも事実。
そんな中、近年の商業施設開発関係者にとってポートランドは今やプランのネタ元、連日多くの日本人がかの地、詣でを続けている。そして、思うこと有りで訪れた僕はといえば世界中どこへ行っても同じなのだが、ただひたすら街を歩き、ウィラメット川沿いを走り続けた。
そうして謳い文句への懐疑心の強いへそ曲がりな僕はカフェラテ片手にそこに内包するはずの糖衣された嘘でも探してみるかとひたすら彷徨ったのだけれど、結局そのかけらを見つけることはなかった。
というより、虚構の換わりにこの街の浅層をつつき始めると生きるということから生じる澱のようなものがしっかり堆積していることに気づいた。
そしてそれは堆肥となり、更なる深層への沈殿は新たな文化の土壌になっていた。そう古きものと新しきものの融合そして創造にはこの基盤(ファンデメンタル)が必要なのだ。
ポートランドは二百数十年の歴史しか持たぬアメリカ合衆国の中でライフスタイルにおいてその基盤の肥沃さを育めた数少ない街の一つなのだった。 だからこそ僅か20数年の社歴しか持たぬ我々バルニバービの中に育ち始めた微生物程度だが確実に有機的進化へ向かう胎動の微動さえグルーヴが起こりえたのだ。 新しきものが産まれる時に必要となるその子袋には過去の堆積と未来からの吸入の融合が必要とされる。 今我々バルニバービは変化に舵をとった。それは決して穏やかなモノではなかろう。
時に絶望と隣り合わせは覚悟の上、それでも我々は僅かとはいえ積み重ねたその思いの地層に明日への希望の種を蒔き散らし進んで行こうとしている。
仲間の皆へ、険しいが無謀な道ではない、苦しいが絶望への路ではない、共に歩もう。 そして我々が標榜する立った一つの未来への思い『飲食業を通してなりたい自分になる!!』を戴き、仲間の笑顔を胸に進んで行こう。 そうポートランドを行き交う人々はいつも親切だった。そして何よりその笑顔は輝いていた。 希望は我々の明日を作る“ポートランド バイブレーション”我々の歩む道への標を思い出させてくれた旅だった。
ご同行そしてご案内いただいた、松本大地さんに感謝を込めて。
サトウヒロヒサ
WRITER 佐藤 裕久
京都市上京区生まれ。神戸市外国語大学英米語学科中退、1991年 バルニバービ設立、代表取締役に就任。現在、東京・大阪をはじめ全国に90店舗(2021年1月末時点)のレストラン・カフェやスイーツショップを展開。著書に『一杯のカフェの力を信じますか?』(河出書房新社)『日本一カフェで街を変える男』(グラフ社)がある。