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仲間へ僕の思うこと。

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仲間へ僕の思うこと。 我々バルニバービがこの仕事への向かう姿勢は、既存の外食産業と言われる他社にあまり見ることはありません。 それは極論を言えば「人は何のために生まれ、何のために生きているのか?」という人としての根源的な問いにまで行き着く概念への問い掛けです。 誰しも生まれてきた意味、生きて行く意味に疑問や不安を持つことがあります。そして苦悩し絶望し乗り越えその結果、覚悟し、時に開き直り、たどり着く先は「何のためなのか分からないが生まれてきた以上、いつの日か死んでいくその日まで今を生きるのだ」という、絶望的だけれど一縷の覚悟の光明なのではないでしょうか? バルニバービはそこに正面から向き合いました。資本主義である以上、誰しも当然お金を稼ぎたいでしょう。それは多分必要条件ではあるけれど、十分条件ではありません。 「人は何のために生まれ、何のために生きているのか?」という問いかけに我々自身が明快な答えを持たない以上、どう生きるかの選択肢は各人に委ねられているはず。そうであるなら「決して楽ではない、効率の悪いサービス業」とりわけ「飲食業を心から志した人」の心のあり方に向き合い、各人各様の選択肢を叶えることにこそ、我々の進むべき道があるはずだと思い至りました。 それは21年前、僕自身が飲食業へ歩み出すきっかけそのものでもありました。数千人の命を奪い、数万棟の家屋を倒壊させ、何万人の仕事を奪い、人々の夢と希望を打ち砕いた阪神・淡路大震災。「人はこんなにも突然死ぬのだ。明日は一瞬に奪われるのだ」という現実を突き付けられたのです。そして飲食業の環境(祖祖父が京都でハイカラなレストラン『グリル オアシス』を大正から営んでいた)に生まれ、小学校3~4年頃にはハンバーグを作れ、何より食べて喜んでもらえるのが大好きだったにも拘らず、父の「食べ物屋にはなるな!」という言いつけに縛られていた自分の背中を明確に押されました。 「心からやりたいことをやるのだ!」 人生は儚く、一瞬で過ぎ去り、時にいきなり奪われるのだとしたら…。 震災直後、水もガスも電気も止まり人々が不安と悲壮な現実に押しつぶされそうになっていた厳しい真冬の日。その日に始めた炊き出しの最中、被災された多くの方々と交わした言葉。「美味しいよ」「生きててよかったなぁ」「頑張ろな!」「温かいね」その会話の一つひとつが体に染み入りました。食べ物はこんなに人を勇気づけ、そして喜ばせる力がある。そして「人を勇気づけたり、喜ばせることで僕はこんなにも幸せだ!」「そうだ僕が生まれ、生きる意味はこれだ!」その時に僕は覚悟したのです。 「食べ物屋をやろう!」自分の心の中にある思いを形にすべく、僕は歩み出しました。 「食べ物屋で人を喜ばせたい」そして「人を喜ばせることで何より自分を喜ばせたい」これがこの世界に入った僕の理由です。 だからこそ我々の理念、目指すことはただその一つです。それは売上でも店舗数でも何でもなく『食べていただくというお仕事を通してなりたい自分になる!』これだけです。こんな働き方を実現できる会社となることを、僕は夢想しているのです。

WRITER 佐藤 裕久

京都市上京区生まれ。神戸市外国語大学英米語学科中退、1991年 バルニバービ設立、代表取締役に就任。現在、東京・大阪をはじめ全国に90店舗(2021年1月末時点)のレストラン・カフェやスイーツショップを展開。著書に『一杯のカフェの力を信じますか?』(河出書房新社)『日本一カフェで街を変える男』(グラフ社)がある。