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『当たり前のはずなのに何故か等閑にされて来たこと』

『当たり前のはずなのに何故か等閑にされて来たこと』

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地方自治体との取り組みが増えてきています。京都府、大津市、奈良市、水戸市・・・何となく増えてきたのではなく意図して進めてきたことです。それはある明確な意図があるからです。 今後都市機能・人口は東京を中心にした大東京圏を軸に京阪神、名古屋、博多・・・の大都市圏に集中します。だからこそ、それ以外の地方都市はその姿(主にメディアから伝えられるイメージや幻想)に振り回されることのないオリジナルな道を歩むべきです。 それぞれの地政、地形、気候、風土、歴史に根ざし、育みそして伝承してきたライフスタイルこそがその存在の意味なはずです。 勿論いくら生まれ育った愛する故郷であっても生活インフラが整わない、もしくは減り続ける地域の存在は難しくなっていきます。社会生活のベースを失って行くからです。 最低限、医療機関、教育機関、治安機能、防災機能を持たないもしくは失いつつあるエリアでの生活は今後ますます難しくなって行きます。そしてその十把一絡げにされる地方都市という名の呼び名から脱却した、都市、市町村は十分機能を果たし、大いなる存在価値を持ちます。 歴史的文化的遺産、温泉、景観、食材を含む食の施設、独自のサービス、特区的扱いの税制や教育機関、産業、文化活動、目先小手先ではなく時間をかけ計画された行政プラン・・そういったものの中に見いだせる豊かな生活。満員電車から解放され、流れるゆったりとした時間、目的を持った人々が集う力強いコミュニティ。ここに取り組んだエリアこそ僕の思う『未来ある地方都市』のあり方です。 京都府立植物園のインザグリーンは北山の風景、そして植物園での時間の過ごし方を変えました。大津駅は観光案内所と共にあの閑散として寂れた感は一掃しました。大津駅は楽しい、何か動いている感じを生み出すことができました。奈良の観光案内所の賑わいは見違えるほどです。そして今回のアトモスでも掲載されている水戸は大きな危機感の中、地元の多くの方々との共同プロジェクトです。 水戸の歴史的文化に一度触れて見てください。水戸の人々は故郷に誇りを持ち愛しています。プロデューサーの坂本以外スタッフ全員水戸で採用しました。そして連日水戸の方々が店舗に関心を持ちケアしてくださっています。食し、飲み、語らい未来を絵が描かれています。 そうなんです、ライフスタイルのあり方に『食』は絶対必要なのです。 僕たち食に携わるものの可能性はここにあるのではないかと思うのです。どんなシーンにおいても『食』がベースとなる・・・当たり前のはずなのに何故か等閑にされて来たことです。 その街角や公園に美味しいレストランはありますか?素敵なカフェはありますか?  本当にオリジナルなものですか? 日比谷公園大噴水広場の売店はもう2年以上も閉じられたままです。どんな行政が施作を打とうと、民間観光事業会社がビジネスを行おうと、『食』をその最大重要要素の一つに入れ込まなければ、その思惑は達成できません。だからこそ我々バルニバービは飲食ビジネスの未来と日本の未来を重ね合わせその重要な役割を果たすべく進んでいきます。

WRITER 佐藤 裕久

京都市上京区生まれ。神戸市外国語大学英米語学科中退、1991年 バルニバービ設立、代表取締役に就任。現在、東京・大阪をはじめ全国に90店舗(2021年1月末時点)のレストラン・カフェやスイーツショップを展開。著書に『一杯のカフェの力を信じますか?』(河出書房新社)『日本一カフェで街を変える男』(グラフ社)がある。