株式会社バルニバービ インターフェイス 取締役 GIACOMO(ジャコモ 本名:高上 彬)
朗らかな笑顔、人懐っこい接客。その柔らかな印象の内には、J.S.A.認定ソムリエ資格に裏付けされた豊富な知識と、常にクエスチョンを持ち続けるという向上心が渦巻いている。接客の面白さの伝道師、GIACOMO(ジャコモ)が日本のサービス業という概念を変えると息をまく。
ばーちゃんのお店が原点
「母方のばーちゃんが大衆食堂をやっていて、子供のころから手伝いは当たり前。何となく小さい頃から商売するんだろうとは考えていました。ばーちゃんにはいつか商売しなさいよ、て言われ続けてたし、自然と飲食に興味を持ち、小学校の卒業文集に将来の夢はラーメン屋か居酒屋って書いていました(笑)。」
いまでも続くそのお店に敬意をいだく。
「ばーちゃんが20歳くらいのときから始めたお店は60年続いて、80歳くらいまで店に立ち続けてた。スゴいですよね。いまは母親が引き継いで営業しています。」その姿を見て飲食へ進みたいと決意。
イタリア人オーナーのピッツェリアへ
カナダへの留学、卒業を経て帰国後、大阪のピッツェリアへ就職。GIACOM(I ジャコミ)と名付けられる。
「初日の出勤日にオーナーのイタリア人に顔見られて、呼び名が決まるという風習で、お前はGIACOMIな、て(笑)。」
最初はキッチン職を希望するも欠員補充のため空きがなく、ホール担当に。イタリアワインをきっかけに、26歳でJ.S.A.認定ソムリエ資格を取得。
「経験がそのまま垂れ流されるだけだったら、もったいないと思ってソムリエの資格とろうと。そのころの先輩がソムリエの資格をもっていて、めっちゃ勉強に付き合ってくれました。テイスティングとか、表現の仕方とか、味の見分け方みたいなものを叩きこまれました。」
ワインの印象を聞かれることは接客をやっていれば日常茶飯事。
「短く、伝わりやすい言葉でと意識しています。藤原紀香みたいな…とか女性に例えてみたり(笑)。」
GIACOMOはユニークに応える。丁寧に伝えることが、必ずしも伝わるとは限らない。必要なのは相手の想像を膨らませられるかどうか。その後、ピッツェリアで料理も任せられるように。
独立も視野に入れつつバルニバービへ
「最初のピッツェリアでホールにも立ち、料理もして、窯でピッツァも焼いていました。独立を考え始めたとき、今の自分やったら絶対大丈夫! と天狗になっていました。」
ただ不安も過る。
「そこはあくまでイタリア人オーナーのお店。お金の流れ、つまり経営はオーナーが一手に引き受けていました。そこを学びたいと思うようになりました。」
自分が学んできた本場のイタリアンとソムリエの資格を武器に、会社に就職し、経営概念を身につけることを考え始める。
「普通のイタリアンを運営しているような会社は違うと感じて、じゃあカフェに行こうと考えました。カフェやったらどこやろと思いついたのがGARB。バルニバービで経営のことを学んでステップアップしよう、という考えでした。」
面接を経てバルニバービに入社、京橋のGARB DRESSINGヘ半年弱勤務し、1号店のHAMACの3F改装にあたり、その責任者としてオペレーションを組み上げる。その後、HAMACのランチ担当として、とにかくランチを盛り上げていく施策を試みる。
「じゃんけん大会やお名前チャンスとか…(笑)。とにかく常にイベントしてました。曜日毎ランチとかで、今日は沖縄料理とか、いろんなこと。」楽しませることを想像させるとGIACOMOの右に出るものは少ない。それは今のGARB weeksでのイベント企画にもつながっている。
指針となった佐藤社長との食事
大阪中之島公園再整備計画にて大阪市に選定され、GARB weeksがOPEN。その店長に抜擢される。その立ち上げ会議の際に佐藤社長に言われる。「髙上の名前のままやっていて殻やぶれるんか」と。今以上にできることがあると気付かされるキッカケに。
「そのとき思い出したのがGIACOM(I ジャコミ)、でもそれはどちらかというと小さい子供につかうあだ名。これからはGIACOMO(ジャコモ)に、大人になろうという気持ちも含めました。そこからずっとGIACOMO。いまでは本名のほうが知られていません(苦笑)。」
GARB weeksをGIACOMOとして立ち上げ、しばらくしてから佐藤社長より食事の誘いを受ける。
「もちろん緊張していて、社長やし、どんなこと考えているんやろと。政治とかお金とか、スゴいこと考えているんやろうなと思いながらどんな話しよう、と思いながら行きました。」
そこで初めて佐藤社長とたっぷり話をする。
「全然違った(笑)。来てよかったなと思える店をつくるにはどうしたらいいか、それにはやっぱりスタッフが幸せじゃないと駄目だし、お店は生き物、仲間が幸せじゃなかったらお客さんが幸せになるわけないやんと。飲食の商売はそこが原点だ、と。」
自分の考えていたことに太鼓判を押された気持ちに。
「ある意味、社長はこんなんでええんや、て思ったくらい(苦笑)。そこからもっと泥臭くやっていこうと思った。スタッフを幸せにするためなら何でもやろうと。」
その決意はゆるがない。
クエスチョンを持って接客を
接客という仕事に誇りをもつGIACOMOは常に考え、察し、そしてへりくだらない。
「いらっしゃいませ、案内してからお水を持ってくるだけでも、クエスチョンを持ってほしい。案内されたときに居心地悪そうにしていないかとか、そのときの会話を聞いてどんな関係なのか、どんな気持ちでお店に来てくれたのかを常に考える。荷物は大丈夫かな、とか、日当り大丈夫かなとか。」
気付きを大切にする。
「興味をもってお客さんに接するのが当然。きっとそう思っていたら、料理が遅かったり、ドリンクが遅かったりといったことに気付くはず。」
そうすれば自然とすべきことが見つかると言う。
「海外ならウェイターさんと何となく目が合ったら『Everything OK?』とか聞いてくれる。もちろん日本語でそれやったらおかしいかもしれないけれど、気持ちはそんな感じです。満足してもらえているか雰囲気を確認する。お水がなくなったから注ぎにいくんじゃない。ドリンクがなくなったから次の注文を聞きにいくんじゃない。楽しんでいるかどうかを確認する。お水が空のままなら当然楽しくない。そこが起点になっていないと。」
そうすればお店が混んできたとき、“忙しさ”は“賑わい”に変わるとスタッフに伝える。
サービス業に誇りをもって
「お客さんと横並びでいたい。いい店でしょ、楽しい? どう? と自慢できるお店。お客さんに近づければ、楽しんでくれたなという、充実感をもてる。」
サービス業はときとして飲食業界としても軽視されがち。
「サービスが好きだ、と声を大にして言える環境にしたい。バルニバービならそれができる。」
お店づくりの顔とも呼べるサービス。そこには決意が見え隠れする。
「サービスをするスタッフが誇りと自信が持てる飲食業へと、業界を変える。そういう会社に、バルニバービはなります。」
<インタビューは、2016年8月時点の内容です>
株式会社バルニバービ インターフェイス 取締役 GIACOMO(ジャコモ 本名:高上 彬)
高校卒業後、カナダのコミュニティカレッジへ入学。2002年卒業後、帰国。ピッツェリアの勤務を経て、バルニバービ入社。大阪中之島公園再整備計画にて大阪市選定の「ガーブウィークス」店長に抜擢。現在、中之島エリアのマネージャーとして牽引する。
大阪中之島のGARBweeksに行けば会えるかも?