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『何故今 地方創生を佐藤は口にするのか? これからの時代、心豊かに暮らすためのささやかな提言』 第三回

『何故今 地方創生を佐藤は口にするのか?
これからの時代、心豊かに暮らすためのささやかな提言』
第三回

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前回 東日本大震災直後、僕がとった措置の二つ『東京の社員とその家族の住処と寝床』及び『居抜き店舗』を関西で確保するというところで話を終えました。

幸い『まさか(坂)』の事態にはならずこれらは不要となりましたが、僕の中では明確にある意識が生まれました。

『1995年の阪神淡路大震災とそこでの炊き出しのお手伝いをきっかけに自身が飲食業にシフトしたことも含め、いずれまたどこかでこのような震災は起こるだろう。現状を鑑みると、地震のみならず環境問題に端を発しているであろう自然災害も今まで以上に頻発するだろう、それを『まさか(坂)』と狼狽えないためにも、営業エリアをできるだけ多く持ち、分散したほうがいい』というものでした。

国全体を見ても、この時期に第二首都構想や首都移転構想が語られ始めました。その後それらがどうなったかは不明ですが、少なくとも自らジャッジ出来る自身の事業においては留まってはならない。狭い国土とはいえ十分に日本には豊かな自然と水があり、南北に長い国土には様々な風土や歴史・文化そして食材を持つ1700を超える自治体が存在している。

そういえば行ったことのない県すらあるよなぁ・・・この機会に見直してみるか!
海外も勿論面白いんだけれど国内を周ってみよう。

それも『食の事業者』としての視線として『食材』『環境』『ロケイション』『交通手段(駅に近ければいいなどという考えでは勿論ありませんが)』を意識し、事業のリスクのヘッヂとしてのポートフォリオ作りのためと、新たな日本の魅力再発見とを兼ねて日本探訪の旅を始めたのです。

範囲は、北は北海道そして南は九州まで、いわゆる離島は一旦置き、陸続きのエリアとしました。そしてその活動を加速させたのは『2013年の2020東京オリンピック開催決定』でした。このことによりますます東京一極集中が進む。富めるもの、力の強いものは更なる快適で優雅な生活スタイルを獲得できるだろうが、そうでないものには息苦しく、生活しにくくなるのではないだろうか?交通機関の混雑と住まいの高騰は、多くの人々から人らしく生きる権利すら奪うことにもなるのでは?けれどその権利を諦めたり失ったりしないといけないことはないはずだ!

だからこそオリンピックは大きな転換点となると考えたのです。

僕の描いた転換ヴィジョンは『世界中から人々がやってきて、盛り上がり、経済も活況となり、ますますインバウンド関連ビジネスが国内産業基盤を強くする』といったキラキラ話ではありません(勿論ワクワクするという意味では楽しみではあったのですが・・・)。

オリンピックにより東京一極集中が進むことは、近年衰退してきたもしくは見捨てられたように見える地方・地域に蘇る機会を与えていくこととなるはずだ。皆がオリンピックに盛り上がる様を見て、"へそ曲がりの天邪鬼"な、人と同じ方向に進むのは嫌な(進めない!!?)僕が日本探訪にファイトを燃やしたのはいうまでもありません。

『動くぞ!!』いよいよ待った無しだな・・・
そしてその頃、尊敬する先輩経営者パソナの南部代表の『淡路島のこれから』を語られる講演会を聴講させていただく機会があったのです。
胸騒ぎがしました。
(続く)

WRITER 佐藤 裕久

京都市上京区生まれ。神戸市外国語大学英米語学科中退、1991年 バルニバービ設立、代表取締役に就任。現在、東京・大阪をはじめ全国に90店舗(2021年1月末時点)のレストラン・カフェやスイーツショップを展開。著書に『一杯のカフェの力を信じますか?』(河出書房新社)『日本一カフェで街を変える男』(グラフ社)がある。